ユーラシアンニュースレター
京都きものファッション協会の卒業生は、世界で活躍している人が
たくさんいます。中でも「あまり聞いたことのない国ですね」と誰もが
言われるくにで、日本語の先生で、日本語以外に華道・茶道・着付け・料理
など、日本文化を幅広く紹介されています。
現地から、「ユーラシアンクラブニュースレター」に掲載された記事が送信されてきたので
紹介します。
その前に、「トルクメニスタン」の民族衣装をご紹介しましょう。
鮮やかな色彩と複雑な織物の、民族衣装を纏っているのが、
森崎律子さんです。
真っ赤な衣装は花嫁衣裳で、はっきりした
目鼻立ちには、日本の着物も似合うだろうな。
とても豪華な衣装です。
下記が≪ユーラシランクラブ ニュースレター≫掲載記事です。
「トルクメニスタンに来て」
日本語教師 森崎律子
昨年9月から、トルクメニスタン国立アザディ世界言語大学で日本語教師をしています。ベルディムハメドフ大統領のお考えで、2007年9月に国で初めてこの大学で日本語学科ができました。実は2008年3月から7月まで来ていましたので2回目になります。
トルクメニスタンは皆様ご存じの通り、前ニヤゾフ大統領による個人崇拝的な独裁体制でありましたが、現大統領に代わってからは教育分野の重視、衛星放送やインターネットの普及により徐々に変わりつつあります。
来る前の印象は、国土の80%が砂漠と聞いていたので、町はもっと埃っぽいと思っていました。それにイスラム教なので戒律が厳しいと思っていましたが、意外に厳しくなくてお酒やたばこを飲んでいる人もいます。1日5回のお祈りも人によって様々です。
ここで生活してみてやはり1番困るのは日本の食材が一切ないので、食べ物に執着している大阪人にとってはつらいものがあります。
ほとんど自炊をしていますが、日本にいる友人が何を食べているのか心配しているので、ときどき作った料理をカメラに収めています。
先日も部屋の電気の修理に来た若い男性が「日本とトルクメニスタンではどっちがいい?」と質問をしました。もちろん日本ですが、彼は世界で一番トルクメニスタンがいいと思っているような口ぶりでた。独裁国家といわれても悲惨なことはなく、国民の生活はむしろ豊かで貧富の差が少なく幸せ感があるように見受けられます。とにかく何が一番いいかというと、何といっても治安がいいということです。外国人にとってこれが一番です。在留邦人は16人ですが、そのうち日本大使館の方が半分以上で、あとは日本企業の駐在員3人、日本語教師2人です。ときどきタクシーに乗ると中国人?と聞かれますが、日本人と答えると笑顔が返ってきて、必ず「トヨタ!」と叫んで、日本に好感を持っているようで、車内の空気が一変します。
大学は5 年まであって、日本語学科は今4 年生が年長です。1 クラス10 人になっているので、学生1 人1 人の顔や性格がクローズアップされ、個別対応の良さがありますが、反面それがストレスになるデメリットもあります。因みにそれで6 キロもやせました。
ともあれ、私の考えは日本語だけでなく日本文化を教えることも重視しています。去年から書道を教えていますが、今回日本に帰って花嫁のお色直しの衣装や帯を買いました。京都の着付けの先生に振袖の帯の結び方を習って、学生に着せてそれを披露したいと思っています。普通のトルクメン人でも茶道・生け花・やくざなどを知っているのには驚きました。トルクメニスタンでは日本文化を紹介し、日本に帰ったら必ずトルクメニスタンを紹介するように活動しています。日本の文化を紹介することを私のライフワークにしています。
「トルクメニスタン日本語スピーチ大会」
国立アザディ世界言語大学 日本語教師 森崎律子
3 月28 日にトルクメニスタン国立アザディ世界言語大学で、第2回「日本語スピーチ大会」を行いました。日本大使館やトルクメニスタンにある日本企業(伊藤忠、コマツ、双日様)の協賛により実施しました。
学年ごとに予選を行い8 人が選ばれ、連日特訓をして大会に臨みました。結果は、1 位3 年男子(テーマ「今ある自分」)、2 位4 年女子(「Together we are the world」)、3 位2 年女子(「父の思い出」)、特別賞4 年女子(「本当に強い人たち」)でした。1 位になった学生は2009 年に1 年間日本に留学した経験があるので当然といえば当然ですが、発表内容が、特別なことを言うのではなく、普通の幸せを有り難いと思えることを発表力で訴えたところが入賞の要因です。2 年生で上級者に混ざって入賞できたことは素晴らしいことであり、ほかの学生にもいい影響を与えたと思います。日本大使館や日本企業の方々による審査員6 名を唸らせました。
スピーチをメインに、作文・寸劇・書道・ペン習字大会も同時開催しました。作文・書道・ペン習字は事前審査済みで、当日舞台で作品を披露しました。スピーチ大会の緊張した中で、寸劇は気持ちをほぐしてくれ、会場が沸きあがりました。1 年生による「大きな蕪」「桃太郎」、2 年生による「笠地蔵」です。1 年生にとってこの大会は太刀打ちできる場面がないので、寸劇を猛練習し、衣装を劇場で借りてくると言う意欲満々の姿勢でした。それを反映したのか、結果は1 年生の「大きな蕪」が最優秀でした。書道もまだまだ練習すればもっと上手になる素質のある学生がいることが分かりました。続いて、双日国際交流財団から電子辞書の贈呈式も行いました。当日の一部始終はテレビで放送され、日本語学科の活動が評価されると同時に、トルクメニスタンでは日本企業が少ない中、このように知らされたことは意義がありました。この大会以降、学生の学習意欲が高まり、より積極的になりました。(暗誦して発表する)スピーチは上手にできても、頭で考えた自分の意見を即、口に出して言えるかと言ったらまだまだです。そんな弱点を解消するため、毎日所感発表をするなど日々訓練できるよう、授業内容も改善し、更に拍車をかけたいと思っています。この大会が開催できたことに、関係者、学生、全ての人々に感謝したいと思います。
「トルクメン人が知っている日本」アンケート調査
(アザディ世界言語大学 日本語教師 森崎律子)
今年の2月~3月にかけて、トルクメニスタン国立アザディ世界言語大学日本語学科の4年生の学生6人が、首都アシガバットに住む人を対象に標記のアンケートを実施した。○調査対象 440人○年齢構成 20歳未満(15%)、20代(49%)、30代(17%)、40代(13%)、50代以上(6%)○アンケート調査の内、10項目を紹介する。
1、日本といったら最初に何を思いつきますか?(重複回答)①電気製品28%・②自動車20%・③忍者10%・すし10%・⑤日の丸 8%・⑥桜5%・⑦やくざ5%⑧漫画(アニメ)4%・富士山4%・新幹線4%・⑪その他4%*若者では電気製品とアニメが多かった。年配の人では忍者が多かった。やくざが知られているのはテレビ映画の影響だと思われる。
2、日本は第二次大戦で敗戦した後、短期間で発展した理由は何だと思いますか? ①全国民が一生懸命頑張ったから57%・②民主主義になって商売が自由になったから26%・③アメリカの援助があったから9%・④お金がたくさんあったから 6%・⑤その他2%
3、日本の都市で知っている名前はどれですか? ①東京40%・②
広島17%・③長崎15%・④大阪13%・⑤奈良3%・⑥京都2%・⑦
札幌2%・⑧神戸1%・⑨名古屋・横浜・沖縄・和歌山・⑬知らない5%
4、日本人が長生きしている理由は何だと思いますか?
①昔から米と魚を食べているから46%・②空気と水がきれいから24%・③医療技術が進んでいるから15%・④ストレスが少ないから7%・⑤収入が多いから5%・⑥その他2%*日本は海に囲まれているから魚を食べる民族だと認識している。また、魚は健康にもよいことは知られているが、内陸のトルクメニスタンではカスピ海の魚ぐらいしかない。
5、1945年に広島と長崎に原爆が落とされたことを知っていますか? ①はい79%・②いいえ21% *年配の人は原爆について知っているが、若者はあまり知らなかった。教科書で習ってはいるが忘れてしまったようだ。
6、次の日本の伝統文化の中で知っているのはどれですか?(複数回答可)
①茶道36%・②生け花22%・③日本舞踊16%・④折り紙13%・⑤書道11%・⑥それ以外2% *意外に伝統文化が知られており、若者の中では折り紙が知られていた。
7、日本のスポーツの中で知っているのはどれですか?(複数回答可)
①空手33%・②柔道20%・③合気道16%・④相撲14%・⑤剣道5%・
⑥知らない12%*柔道・空手はトルクメニスタンでも盛んなスポーツの一つであり、どこでも教えられている。
8、日本へ行きたいですか? ①はい84%・②いいえ14%・③わか
らない2% *男性の中では行きたいと答えた人が多かった。特に
旅行、日本料理を味わいたいという欲望が強い。行きたくないと答
えた人は女性が多かった。自分の国のほうが安全だと思っている。
また、日本は工業が発展しているから、空気が汚いので行きたくな
いと答えた人もいた。